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手塚治虫の名著をひもとく

Posted on 2016/11/23

小学・中学・高校時、手塚治虫は私にとって全く特別な存在でした。
どうしてそうだったのか?…ここまで漫画文化が浸透してくると、そんな事を考えること自体、意味のないことのようにさえ思えます。
かつて「漫画なんか」と蔑まれた時代から一転し、今や単純に手塚治虫を賞賛する番組や記事はたくさんあります。

そんな中、このTV番組は視点が少々違っていました。
なぜ、手塚治虫は違うのか…その、ヒントを与えてくれそうな楽しい番組を紹介します。

tezuka

(100分de手塚治虫[NHK・Eテレ]です。見逃した方・興味のある方は、有料ですが御覧になってはいかがでしょうか。)
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2016074378SC000/?spg=P201200086200000

番組の中からほんの一部を、文章に書き出してみました。
子供心に、手塚治虫をなぜ他の作家と比較して、別格の存在と感じたのかが、少しわかったような気がします。

…………以下、抜粋です。…………

起承転結がはっきりしていて、しかもテーマ性があるという、そういう文学としてコクのある長編漫画作品を描けたのはやっぱり後にも先にも手塚じゃないのかなと、いうそういう気はしています。

手塚まんがの一番の特徴は私は「ポリフォニー」だと思ってるんですね。
「ポリフォニー」とは、もともと音楽用語なんですけれども、いろんな旋律が同時進行してある種のハーモニーを作り出すような構成です。

ロシアの文芸評論家で思想家でもあるミハイル・バフチンが、ドストエフスキーの小説はなぜ特別なのかという事を解明する時にポリフォニーという言葉を使っています。

どういう事かと言うと、トルストイとかそういう小説家はいっぱい人が出てくるんだけどみんな作家の独り言を人物に振り分けてるだけだという言い方をしてるわけです。
すごくドストエフスキーの空間はポリフォニックに感じられるという論説を展開したんですよね。

手塚作品ってひょっとしたらこの漫画界でポリフォニックな作品を作りえた最初で、ひょっとしたら最後、そういう人かもしれないなというふうに私は感じています。

単に登場人物の多い漫画は世の中にたくさんあるけれど、あるけども、それは何かの一つの都合によってるものではないと…。

ここで取り上げたい作品は「奇子」」という、これまた結構猟奇的な、青森県のある名家の没落の話なんですけれども、70年代初め青年誌に手塚が連載した長編です。
その中のドロドロした人間関係が非常にある種のリアリティを持って描かれるという作品ですね。

敗戦直後のドロドロしたストーリーなんですけれどもみんなある意味欲望が分かりやすいと言えば分かりやすい。
お金があれば欲しいと思うし女がいれば抱きたいと思うしみたいな結構打算的な欲望をみんな持っていてそれぞれの立場から自分の欲望を非常に素直に追求していくんですけど、それが非常にこう巧妙に絡み合ってですね。

結局みんな自己中心的に動くんだけどもそれが織り成していく非常に複雑なストーリー展開、これが魅力と言っていいんじゃないかと思います。

「奇子」は登場人物の群像が重層的な物語を織り成すまんがですが、一人一人は普通の人間でヒーローはいません。

これは諸説あると思うんですが手塚さんはいわゆる立ったキャラを作るのあんまり上手じゃなかったという説があるんですよね。

よく漫画家が言うのは、キャラを立てたらあとは勝手に動きだすからそれに任せましょう、という表現あるけど、多分手塚はそれをしなかったんじゃないかと思うんですよね。

まずストーリーがあってそれを場としてそこにキャラクターをはめ込んでいくという印象の方が強いんですよ。
キャラクターに依存して話を動かすというのは、コツをつかめば結構いろんな話ができると思うんですけど、手塚さんのように湯水のようにストーリーがあふれてくるというのはやっぱり才能としか言いようがなく、非常に構えが大きい………。

http://www.nhk.or.jp/meicho/ 「100分de名著」より




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